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脱毛(抗がん剤・放射線の副作用)

がん治療中の脱毛は、抗がん剤や放射線の副作用が原因です。脱毛を起こす代表的な抗がん剤には、タキソール(パクリタキセル)、タキソテール(ドセタキセル)があります。抗がん剤による脱毛では、頭髪をはじめ全身の体毛が抜け落ちます。放射線による脱毛は、放射線が当たった場所だけに起こるのが特徴です。 脱毛は命に関わる副作用ではなく、治療をやめて数ヶ月するとまた発毛してきます。けして恐れる副作用ではありません。とはいっても目に見えてわかるために、精神的にショックの大きな副作用です。外見が変わり、周囲の人にがん治療中であることが気づかれるという不安もあります。 脱毛による精神ストレスが免疫力を低下させてしまうことも心配されます。免疫力の状態の良し悪しは、がんの再発や合併症(肺炎などの感染症)の発現に深く関わりがあります。そのことを指摘してくれる医療関係者は少ないのですが、ストレスや気の持ち方は治療に大きな影響を及ぼすことを知ってください。脱毛が大きなストレスにならないように事前にできる用意しておくこと、そして「治療が終わればまた発毛する」と割り切った考え方が大切です。

抗がん剤による脱毛の頻度

脱毛が起こる頻度やその程度は、抗がん剤によって異なります。ほぼ100%の人が脱毛してしまう抗がん剤もあれば、ほとんど脱毛が起こらない抗がん剤もあります。日本でよく使われている抗がん剤の脱毛率※をまとめてみました。 ※各薬剤の添付文書の副作用発現率から引用しています。複数の記載がある場合は、高い数値を記載するようにしています。
おおよその脱毛頻度 商品名(成分名)・脱毛率
90%以上 タキソール(パクリタキセル) タキソテール(ドセタキセル)
90%未満 アドリアシン(ドキソルビシン)61.6% エンドキサン(シクロホスファミド)24.32%~57%
50%未満 ランダ・ブリプラチン(シスプラチン)25.7% パラプラチン(カルボプラチン)18.25%
10%未満 ジェムザール(ゲムシタビン)10%未満 ティーエスワン(テガフール・ギメラシル・オテラシル)5%未満 5-FU(フルオロウラシル)5%未満 ノルバデックス(タモキシフェン)5%未満 アクプラ(ネダラプラチン)2.36% アリミデックス(アナストロゾール)1%未満
なお抗がん剤治療は多くの場合、2種類以上の抗がん剤を組み合わせて使います。単独使用に比べて脱毛やその他の副作用の発現頻度は高まります。 脱毛が起こりやすいタキソールも単独で使われることは少なく、他の抗がん剤と組み合わせて使われるのが一般的です。 健康や免疫力を維持できる「冬虫夏草」とは?

抗がん剤で脱毛が起こる理由

抗がん剤は、がん細胞と正常細胞を完全に見分けているわけではありません。抗がん剤は「どちらかというと正常細胞よりもがん細胞を多く攻撃する薬剤」だと理解してください。 多くの抗がん剤は、がん細胞が細胞分裂するタイミングを狙って攻撃を仕掛けます。正常細胞よりも細胞分裂が活発ながん細胞は、多くの攻撃を受けるという仕組みです。 ですが正常細胞の中にも細胞分裂のペースが速いものがあり、そのひとつが毛根細胞です。 毛根細胞は抗がん剤によりダメージを受けやすいため、脱毛が起こってしまうのです。

放射線で脱毛が起こる理由

脳腫瘍に放射線治療を行うとき、頭髪の脱毛が起こることがあります。がん細胞は放射線に弱いという性質を持っていますが、がんを叩くのに十分な量の放射線を使うと正常細胞もある程度のダメージを受けてしまいます。放射線が通過する場所にある毛根細胞がダメージを受けてしまい脱毛が起こるのです。 全身に影響が及ぶ抗がん剤とは違い、放射線が当たった場所だけに脱毛が起こります。放射線が突き抜けた反対側の皮膚にも影響が出ることもあります。 治療法の違いにより、脱毛の程度に差があります。
全脳照射 脳全体に放射線を当てる方法です。頭皮全体に放射線が当たるため高率・広範囲で頭髪の脱毛が起こります。
サイバーナイフ 放射線を自由な方向から照射することができる装置がサイバーナイフです。様々な方向から腫瘍を狙うことで、正常組織に当たる放射線は分散させ、腫瘍には放射線を集中させることができます。円形脱毛が起こることがありますが、広範囲の脱毛は起こりません。
ガンマナイフ 201箇所から弱い放射線を出して、腫瘍で放射線を集中させる方法です。頭皮を通過する放射線は分散していて弱いので毛根細胞はあまりダメージを受けません。そのため脱毛はあまり起こりません。

脱毛が起こるまでの期間

抗がん剤による脱毛は、治療を開始してから2週間ほど後で起こります。 放射線治療の場合もすぐには脱毛せず、2週間ほどしてから脱毛が始まることが多いです。放射線があたってない場所は脱毛が起こりません。一気に抜けてしまうのではなく、数週間かけて脱毛していきます。治療中であっても細い毛が生えてくることがありますが、その毛は弱くてすぐに抜けてしまいます。

発毛するまでの期間

ほとんどの人は、治療を終えると髪がまた生えてきます。治療終了後、3ヶ月~6カ月すると発毛が始まります。最初の頃は毛の質・太さ・色が変わることがあります。以前の髪質に戻るのには1年~数年かかることがあります。

かつらの準備

脱毛が起こりやすい治療を開始するとき、事前に医師から「かつらを準備するように」と提案されるでしょう。 時間や体力的に余裕がある治療前に準備しておいたほうが良いです。治療が始まり、だるさや吐き気などの副作用が出てしまうと、どうしても余裕が無くなります。また副作用で免疫が低下していると、外出した時の感染症が心配です。
  • かつらのタイプによりますが、オーダー品だと手元に届くまでに1ヶ月以上かかることもあります。
  • 髪の毛がある時と無い時ではサイズが変わります。サイズ調整できるものを選ぶと安心です。
  • 髪の毛が短めの男性は、かつらのもみあげや襟足の部分が大切です。よくチェックしてください。
  • かつらも髪の毛のように自分に合うようにカットできます。経験のある美容師にお願いしましょう。
  • 帽子に付けるタイプの付け毛もあります。

帽子、バンダナの準備

肌触りの優しい帽子を用意しておきましょう。複数あったほうが良いと思います。深めの帽子は髪の毛がないことがわかりにくく、持っていると便利です。 帽子には、刺激や紫外線、寒さなどから頭皮を守るという意味もあります。治療によりダメージを受けた皮膚は敏感になっています。外出時は必ず帽子をかぶりましょう。 バンダナを利用するのも良い方法です。髪の毛が抜け始めるころは、バンダナをしておくと髪の毛を部屋にまき散らしてしまわずに済みます。スカーフを利用するのも良いでしょう。 寝ている間は抜け毛が枕などにたくさんつくことがあるので、柔らかい帽子をかぶってお休みください。

服の色

脱毛が始まっているとき、外出時は色の濃い服を着ると良いでしょう。白っぽい服だと抜けた髪の毛が目立ってしまいます。

洗髪について

放射線を受けた頭皮は弱くなっています。刺激の少ないシャンプーを使いましょう。洗髪の際は指に力を入れず、優しく洗うことを心がけてください。抜け毛を気にして洗髪をためらうこともあるかもしれませんが、放射線治療でダメージを受けている頭皮はいつも清潔にしているべきです。 シャンプーが肌に残らないように、よく流してください。熱いシャワーは刺激になるので避けましょう。 乾かすときも優しくタオルで水分を吸い取るようにします。ドライヤーの温風は控えたほうがいいでしょう。

その他

あらかじめショートカットにしておくと抜け毛の掃除が楽になります。 爪は短く切っておきましょう。 抜け毛の掃除には粘着テープが便利なので用意しておきましょう。 脱毛中は育毛剤の効果は得られません。逆に刺激になってしまうので使用しないでください。

脱毛を防ぐ方法

残念ながら脱毛を完全に防ぐ方法はありません。 ディグニキャップという頭部を冷やす装置に効果があるようですが、まだ日本への導入は準備段階です。これは抗がん剤点滴中に頭皮を冷やして血流を減らし、毛根細胞への抗がん剤ダメージを減らすというものです。 自宅で手軽にできることとして、食事の内容を改善してみてください。脱毛の程度は体質や栄養状態によって差が出ます。食事からビタミンやミネラルをしっかり摂るように心がけましょう。カロリーばかり摂っていてもあまり役には立ちません。 良い食事はがん治療にも役立ちます。食事のページもぜひご覧ください。不明点がありましたら気兼ねなくお問い合わせ下さい。
監修医師 藤沼秀光(医学博士)  <藤沼医院 院長、栃木県警察医> 

監修医師 藤沼秀光(医学博士)

大学病院で研究、診療に従事したあと、藤沼医院にて統合医療に専念。学生時代より、病気は悪玉ではなく心と体のクリーニング現象(清浄化現象)であると捉え、その存在意義を追求するための研究・検証を行っている。’91年よりデトックス療法を開始、その後、魂と病気/心と病気、量子エネルギー測定等、未開発の先進医学に興味をもって取り組んでいる。日常診療では清浄化現象に適う、自然な医療を実践し、ガン・アトピー・リウマチ等の代替医療も手がけ研究会、学会、講演、TVで活躍し、遠く他県からの来院も少なくない。

学歴:昭和54年 3月 獨協医科大学医学部卒業/平成 2年 3月 医学博士号取得
所属学会:日本臨床生理学会 評議員/日本循環器学会 地方会評議員